Enhancement

(図師雅人・藤林悠による2人展)

2017.03-04

人類の発明史に目を向けてみるならば、そこには人々の意識の発火が時と大地をつなぎ、世界に変化をもたらしてきたことを知ります。 芸術表現における「メディウム」もまたひとつの発明でしょう。 作品を形成する絵具や粘土といった造形要素、また広く現代の状況を踏まえた上で様々な物や機器が「メディウム」と語られます。これらは作家が作品としての主体性を反映させるための媒体である、まずこう認識できるでしょう。そしてこの言葉は基本的かつ重要な意味を持ちながらも、時代の鏡として常に変化をカバーし続けます。

昨今、特に注目されているのは、近いヴィジョンとして見えつつあるサイバネティクスやAIといった先端科学技術です。
その中でも特に私たちが注視したいのは2000年前後から展開される議論 「enhancement(能力増強)」についてです。多様な意見を生むこの議論は、「メディウム」についても刺激的な示唆を与えてくれるように思います。 パワードスーツ、インプラントやサプリメント、そして遺伝子操作といった技術によって、 人間は生来備える能力を増強及び代補し、拡張される新しい知覚野を獲得します。それは新しい身体のあり方、新しい個人像、新しい共同体、新しい社会を生み出すことでしょう。
さて、ここで「メディウム」を能力増強の手段であると問うてみたいと思います。古典から現代に及ぶ多種多様なメディウムもまた、作者の「反映」の手段としてだけではなく、作者の身体性を「増強」するものであるとした場合、私たちが普段扱ってきた「メディウム」にどのような可能性を見出すことができるのでしょうか。そして、そこから芸術家が示すことのできる立ち位置をどう捉えていくべきなのでしょう? この考察は、芸術家の日常的な所作が、今後の社会を考える上で、科学技術的なアプローチとはまた異なるユニークな実例になり得る可能性があります。

今回、上記の背景から自分たちの身体が関わり合うもの、そして作り出すものはいったい「何が /を増強し、そこから何を表出しているのか?」という問いから展覧会を考察していきます。

この2人展はまず、当事者である図師と藤林のそれぞれのアプローチから行う、実験と考察を前提としたものです。また会期中はさまざまな作家をトークゲストとして呼び、本展のテーマについて 語り合いながら、多角的な考察を行います。
この手順を踏んだ後、本テーマにより具体的な視点を与えてくれる作家を数人選出し、更に考察を深める本展へと展開していきます。

 

展示状況撮影:松尾宇人

2017.3/24(金)〜4/9(日)
@ Space Wunderkammer(東京都練馬区)